Kindleで本が出版されました!

「最近、何もしたくない」が2週間続いたら危険。独身男のための、うつセルフチェックと初動マニュアル

  • URLをコピーしました!

ある日曜の午後二時。

俺は布団の上で、スマホを指で下にスクロールしていた。何を見ているわけでもない。Twitterのタイムラインが流れていく。同じツイートが何度も画面に現れる。意味は頭に入ってこない。

朝起きたのは九時。それから五時間、ほとんど布団から出ていない。トイレに二回行って、台所で水を一杯飲んだだけだ。腹が減っているような、減っていないような。よく分からない感覚。

カーテンの隙間から、秋の光が細い帯になって畳の上に伸びていた。

立ち上がろうとした。だが体が動かない。動かないというより、動かす理由が見つからない。本を読む気がしない。映画を見る気もしない。風呂に入りたくもない。何もしたくないが、寝たいわけでもない。

その時、ふと頭に浮かんだ言葉があった。

「これ、もう、うつの入り口じゃないか」

恐怖というより、確認に近い感覚だった。三週間前から、似たような日曜日が続いていた。

世間は「最近気分が落ち込んだら、カフェで気分転換を」「友達と話して発散しよう」と言う。それは家族や友達がいる人間の話だ。一人で暮らす独身男にとって、メンタルの不調は、誰にも気づかれないまま静かに進行する。

だから自分で気づくしかない。今日はそのための話だ。

この記事で解決できる悩み
  • 最近やる気が出ないが、それが「ただの怠惰」なのか「うつの始まり」なのか分からない
  • 心療内科に行くべきか迷っているが、ハードルが高い
  • 病院に行く前に、自宅でできることを知りたい
目次

独身男が見逃しやすい、うつの初期サイン

うつ病のセルフチェック項目は、ネットで検索すればいくらでも出てくる。だがその多くは「家族や同僚に指摘された」「人と会うのが億劫になった」みたいな、他者との関係を前提にしている。

独身男には参考にならない。そもそも指摘してくれる家族も、会うのが億劫になる相手もいないからだ。

だから独身男の生活実感に翻訳した、別のサインを書いておく。

  • 布団から起き上がるまでの時間が、明らかに伸びた
    目は覚めているのに、起き上がる気力が湧かない。以前は30分で起きていたのに、最近は2時間布団の中にいる。これは要注意のサインだ。
  • 休日に「何もしないで一日が終わった」が連続する
    土日が、気づいたら過ぎている。スマホを眺めていただけ。風呂にも入っていない。これが3週間以上続いていたら、危険信号だ。
  • 好きだったはずのものが、つまらなく感じる
    深夜ラジオ、本、映画、酒、何でもいい。以前は楽しめていたものに、感情が反応しなくなる。これは「快感喪失」という、うつの典型的な症状の一つだ。
  • 食欲が極端に変化する
    何も食べたくない、あるいは逆に過食気味になる。コンビニで何を買うか決められず、店内をぐるぐる回ってしまう。これも兆候の一つ。
  • 夜中に何度も目が覚める
    眠れているはずなのに、朝起きた時に疲れが取れていない。中途覚醒は、うつの初期に高い頻度で現れる。
  • 「朝、目が覚めなければいいのに」と頻繁に思う
    これが出てきたら、もう様子見の段階じゃない。即座に行動するべきタイミングだ。

2週間ルール、という線引き

これらのサインが何日か続いただけなら、誰にでもある。仕事で疲れた、季節の変わり目、たまたま調子の悪い週。そういう一過性のものは、放っておけば戻る。

判断の基準は「2週間」だ。

精神医学の世界で、うつ病の診断基準として広く使われているDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)でも、うつ症状が「2週間以上ほぼ毎日続いている」ことが診断の重要な要件になっている。

逆に言えば、2週間続いていなければまだ「不調」の範囲かもしれない。だが2週間を超えたら、それはもう自力で何とかできる領域を出ている可能性が高い。

紙のカレンダーに、症状が出た日に小さく印をつける。それだけでいい。スマホのカレンダーアプリでもいい。記録があれば自分の状態を客観視できる。記憶だけに頼ると、独身男はだいたい「気のせいだ」と過小評価する。

心療内科の受診ハードルを、下げておく

「心療内科は敷居が高い」と感じている独身男は多い。俺もそうだった。だから前もって情報を持っておくと、いざという時に動きやすい。

初診費用は、保険適用3割負担で2,000〜3,000円程度。診断書が必要なら追加で数千円。決して安くはないが、月の通信費より安い。

予約方法は、電話のみのところが多い。Web予約に対応している病院もある。「(自治体名) 心療内科」「(最寄り駅名) 心療内科」で検索すれば、リストが出てくる。

予約の電話では、長い説明はいらない。「初めてです。最近の不調を相談したい」とだけ伝えれば、病院側が必要な情報を聞いてくれる。

初診で何をするか。問診票を書く。最近の症状、いつからか、生活状況、既往歴。医師との面談は15〜30分程度。話したくないことは話さなくていい。「眠れない」「やる気が出ない」だけでも、医師は十分判断できる。

薬を飲みたくない場合は、初診で「できれば薬は飲みたくない」と伝えれば、医師はそれを尊重する。「もう少し様子を見ましょう」「生活面でこういう工夫をしてみてください」というアドバイスで終わるケースも多い。

ちなみに心療内科は、思っているより混んでいる。予約が1〜2ヶ月先になることも珍しくない。症状が出てからじゃなく、「念のため」の段階で予約しておくくらいの軽さで動いて構わない。

受診前にできる、最低限のセルフケア

心療内科の予約を取った上で、受診日までの間にやれることがある。これは「治療」じゃない。「これ以上悪化させない」ための応急処置だ。

朝、カーテンを開けて10分外を歩く。日光を浴びるとセロトニンという神経伝達物質が分泌される。これが不足するとうつ症状が悪化しやすい。コンビニまで遠回りする、それだけでいい。

寝る前にスマホを見ない。これは独身男にとって特にきつい。だが寝室にスマホを持ち込まないだけで、睡眠の質が変わる。スマホは台所か玄関に置いて寝る。目覚まし代わりに古い目覚まし時計を1,000円で買えばいい。

俺はセイコーの一番シンプルなやつを使っている。スマホを寝室から追い出すための、最初の装備だ
セイコークロック(Seiko Clock) 置き時計 黒メタリック

頭の中の不安を、紙に書き出す。ノートに、思いついた単語を羅列する。「金」「親」「仕事」「将来」「むかつく」。文章にしなくていい。書いたら、そのページは閉じて読み返さない。頭の中の混沌が物理的に外に移動する。これだけで一晩眠れることがある。

深夜ラジオを流す。radikoの無料エリア配信か、月額385円のプレミアム。オードリーのオールナイトニッポン、有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER。誰かの声が部屋にあるだけで、孤独の濃度が薄まる。

これらは派手な効果はない。だが「布団の中で天井を見ながら、何時間も自分を責める」という最悪のループから、ほんの少しだけ距離を取る助けになる。

結論:精神は、他人に気づいてもらえない財産だ

独身男にとって、精神の不調は孤独な戦いだ。

身体の不調なら、目に見える形で現れる。咳が出る、熱が出る、傷が痛む。だから人にも見える。誰かが気づく可能性がある。

だが精神の不調は見えない。レントゲンに映らない。血液検査で数値が出ない。本人ですら、自分が壊れかけていることに気づきにくい。気づかれないまま進行して、ある日突然、立てなくなる。

俺たちには、不調を察してくれる妻も、心配して声をかけてくれる親しい友人もいない。だから自分の状態を、自分で観察するしかない。

布団から起き上がるまでの時間。休日に何をしたか。好きだったものに反応するか。食欲はあるか。夜眠れているか。

これらを2週間スパンで自分にチェックする。それが独身男にできる、ほぼ唯一のメンタル防衛策だ。

精神は、最後に残った財産だ。家族もいない、金もない、地位もない人間が、それでも持っているのは、自分の頭の中の静けさだけだ。それを失ったら本当に、何も残らない。

だから、誰にも気づかれないうちに、自分で気づく。自分で線を引く。自分で動く。

それしかない。それだけのことだ。

身体メンテナンスについての関連記事

独身男性の身体メンテナンスというテーマを、別の角度から書いた記事もある。気になったものから読んでくれればいい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

kouji_kimuraのアバター kouji_kimura 限界独身サバイバー

38歳、独身。手取り22万の電話オペレーター。 27歳で「あなたとの将来が見えない」と振られたことを機に、世間並みの幸せを諦める。現在は、人生のダメージを最小化する「生存防衛線」を構築し、静かな孤独を享受している。

目次