Kindleで本が出版されました!

「40代 独身 転職 無理」で検索した夜に ― 諦めるべきは”転職”じゃなくて”幻想”のほうだ

  • URLをコピーしました!

「40代 独身 転職 無理」。

このワードを検索窓に打ち込んだ夜の気持ちは、よくわかる。たぶん今、布団の中か、コンビニ帰りの部屋の床か、深夜のデスクの前でスマホを握りしめているはずだ。検索した本人がもう答えを知っている。だから「無理」って言葉まで打ち込んでいる。誰かに「無理じゃないよ」って言ってほしいわけじゃない。「やっぱり無理だよな」って静かに頷いてくれる声を探している。

俺もそうだった。30代の終わりに何度もこのキーワードで検索した。出てくるのは「諦めるな!」「40代でも成功事例多数!」みたいな、転職エージェントの広告ばかり。あれを読むたびに胃の奥が冷たくなった。誰のための言葉なんだ、これは。少なくとも俺じゃない。

だから今日は、そういう景気のいい話は一切しない。「無理」だと感じているあなたに、その感覚は正しい、という話をする。その上でじゃあどうするかを、淡々と書く。

この記事で解決できる悩み
  • 「40代 独身 転職 無理」で検索して、ますます落ち込んでいる
  • 転職エージェントの「成功事例」が、自分には全く当てはまらないと感じている
  • 転職を諦めた後、何をどう考えればいいのかわからない
目次

「40代独身の転職が無理」は、感覚じゃなくて統計的事実だ

まず、冷たい数字から並べておく。気休めじゃなく事実だからだ。

厚生労働省の「雇用動向調査」を見れば、40〜44歳男性の転職入職率は20代の半分以下だ。さらに転職して「賃金が増えた」と答えた人の割合も、年代が上がるほど下がっていく。40代後半になると、転職した結果「賃金が減った」人の割合のほうが多くなる。

つまり40代の転職は「年収が上がる挑戦」じゃなくて「年収が下がる確率の高い賭け」ってことだ。エージェントのサイトに書いてあるキラキラした話は、宝くじの「高額当選者の声」と同じ構造をしている。当たった人だけ大きく取り上げられて、外れた99%は記事にならない。

加えて、俺たち独身・低年収層にはもうひとつ重い枷がある。家族を養うために必死で頑張ってきた」というストーリーがないってことだ。面接官は40代を見るとき必ずこう聞く。「これまで何を背負ってきましたか?」と。住宅ローンも、子供の教育費も、介護も背負っていない俺たちには、語るべきストーリーがない。これは欠陥じゃない。ただ、市場がそういう物語を求めている、というだけの話だ。だが残酷なことに、それが評価に直結する。「独身で身軽ですね」なんて好意的に受け取ってくれる面接官は、たぶんこの世にいない。

転職エージェントが絶対に言わないこと

転職エージェントのサイトには「40代の転職成功事例」がずらりと並んでいる。だが、よく読んでみてほしい。

ほぼ全員、「現職で年収500万以上」「マネジメント経験あり」「業界経験10年以上」のどれかに当てはまる人間だ。年収320万のコールセンター勤務の俺たちの事例は、ひとつも載っていない。

なぜか。エージェントは年収の30〜35%を企業から成功報酬として受け取るビジネスモデルだからだ。年収320万の人間を転職させても、彼らの利益は100万円程度。年収800万の人間を転職させれば、利益は240万円。彼らがどっちに営業リソースを割くかは、子供でもわかる。

エージェントに登録して「お祈りメール」しか来ないのは、あなたの能力の問題じゃない。そもそもエージェントの商品ラインナップに、俺たちは載っていないっていう構造の問題なんだ。これを知っておくだけで、夜中の自己否定がひとつ減る。商品棚に並べてもらえない商品が、いくら品質を磨いても売れないのと同じだ。

「無理」を受け入れた先に見える、3つの現実的な選択肢

じゃあ転職が無理だと受け入れたら、俺たちには何が残るのか。絶望じゃない。むしろ視界がクリアになる。選択肢はだいたい3つに絞られる。

ひとつめは「今の会社に、戦略的にしがみつく」こと。これが王道だ。月22万の手取りを定年まで失わないことを最大目標にする。出世は狙わない。だが「いなくなると困る雑用係」のポジションを死守する。これについては別記事で詳しく書いたので、興味があればそちらも読んでほしい。

ふたつめは「同業種・同職種への横移動」だ。40代の転職で唯一現実的に可能なのは、これだけだと言っていい。コールセンター勤務なら、別のコールセンターへ。事務職なら、別の事務職へ。年収は同じか少し下がるが、即戦力として評価される可能性はある。

狙うべきは「大手の下請け」より「中堅の独立系」だ。前者は使い捨て、後者は人手不足で40代でも歓迎される傾向がある。求人を見るならリクナビNEXTやdoda、ハローワークのインターネットサービスあたりを淡々と巡回する。エージェント経由じゃなく直接応募のほうが俺たちには向いている。エージェントに「商品」として扱われないなら、自分で売り込むしかない。

みっつめは「正社員という幻想を、一度手放す」ことだ。これは劇薬だ。だが選択肢として持っておくべきだ。例えば地方自治体の会計年度任用職員。年収は250〜300万程度に下がるが、残業はほぼゼロ、メンタルへの負荷は今の半分以下になることが多い。「正社員じゃないと終わり」っていうのは、昭和の価値観だ。

年収320万の正社員と、年収280万の非正規で残業ゼロ。手取りで考えたら後者のほうが時給は高い場合がある。世間体は悪い。だが俺たちはもう、世間体で食っていける年齢じゃない。

俺たちが「なぜ40代で詰むのか」を、日本型雇用の構造から冷静に解説してくれる。感情論じゃなく、構造を理解することで諦観の解像度が上がる。
ジョブ型雇用社会とは何か』濱口桂一郎(岩波新書)

諦めるべきは”転職”じゃない、”幻想”のほうだ

ここまで読んで気づいたかもしれない。

俺は「転職を諦めろ」とは一度も言っていない。諦めるべきは「転職すれば人生がリセットされる」っていう幻想のほうだ。

20代の頃に転職したときの、あの「人生が変わるかもしれない」っていう高揚感をもう一度味わいたい。それが俺たちが転職サイトを開いてしまう本当の理由だ。だが残念ながら、40代の転職にあの高揚感はない。あるのは、書類審査で30社落ちる現実と、面接で年下の人事担当者に憐れまれる屈辱だけだ。

幻想を捨てれば、転職は「ただの引っ越し」になる。住む部屋を変えるのと、勤める会社を変えるのは本質的には同じだ。年収が上がる魔法じゃない。ただの環境変更だ。それくらい冷めた目で見られるようになったとき、初めて転職は俺たちにとっての「使える道具」になる。

俺たちにとって、それはどういう意味を持つのか

40代 独身 転職 無理」で検索してきたあなたに、最後に伝えたいことはひとつだけだ。

その感覚は、正しい

無理だと感じる自分を責める必要はない。市場の構造がそうなっているだけだ。だが「無理」を受け入れることは敗北じゃない。むしろここからが、本当の戦略の始まりだ。

転職するエネルギーがないなら、転職しないで生き延びる方法を考える。それだけのことだ。世間は派手な転身物語ばかり讃えるが、俺たちが本当にやるべきは、今いる場所で静かに呼吸を続けること。それ以上でもそれ以下でもない。

明日もまた、同じ電車に乗って同じオフィスに行く。それは「無理」を受け入れた人間だけが選べる、地味だが確かな道だ。

まあ、仕方ない。それでいい。

仕事・働き方についての関連記事

独身男性の仕事・働き方というテーマを、別の角度から書いた記事もある。気になったものから読んでくれればいい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

kouji_kimuraのアバター kouji_kimura 限界独身サバイバー

38歳、独身。手取り22万の電話オペレーター。 27歳で「あなたとの将来が見えない」と振られたことを機に、世間並みの幸せを諦める。現在は、人生のダメージを最小化する「生存防衛線」を構築し、静かな孤独を享受している。

目次