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「コールセンター 辞めたい」と検索する中年の俺たちへ ― 辞める前に読んでほしい、10年生き残った男の独白

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「コールセンター 辞めたい」。

このキーワードを検索窓に打ち込むタイミングは、だいたい決まっている。昼休みのトイレの個室か、終業後の帰りの電車か、休日の日曜の夜だ。俺もこの10年で、たぶん100回はこの言葉を検索した。

クレーマーに30分罵倒された後の昼休み。理不尽な評価面談の帰り道。月曜の朝が来ることに耐えられない日曜の23時。そのたびにスマホを開いて、同じ言葉を打ち込んでいた。「コールセンター 辞めたい」。出てくる記事は「向いてない人の特徴」とか「転職成功体験談」とか、どこか他人事のような話ばかりだった。誰も俺の話はしてくれない。

だから今日は、辞めたい気持ちを抱えながら、それでも10年以上この現場に立ち続けている俺が、戦友に向けて静かに書く。辞めろとも続けろとも言わない。ただ、判断する前に知っておいたほうがいいことを並べる。

この記事で解決できる悩み
  • コールセンターのクレーム対応で、心身ともに限界を感じている
  • 「辞めたい」けど、中年で次の仕事がない現実に立ち止まっている
  • 辞めずに続けるとしたら、何をどう変えればいいのかわからない
目次

中年がコールセンターで消耗する、本当の理由

まず、自分の状態を正しく理解することから始めたい。

コールセンターで中年が消耗する理由を、世間は「クレーム対応がきついから」と単純化したがる。だが10年やってきて気づいたのは、本当の原因はそこじゃないってことだ。クレームそのものは、慣れる。慣れない人もいるが、慣れる人もいる。問題はもっと別の場所にある。

本当の原因はだいたい3つだ。

ひとつめは「感情労働の蓄積疲労」。クレーム対応の最中、俺たちは自分の本当の感情を押し殺してマニュアル通りの「申し訳ございません」を繰り返す。これを1日に何十回も、何年も続ける。すると、ある日気づく。プライベートでも素の表情が出せなくなっている。笑顔が作り笑いになり、怒りも喜びも輪郭がぼやけてくる。これは精神論じゃなくて、心理学では「情動の麻痺」と呼ばれる、ちゃんとした症状だ。

ふたつめは「年下のSVに管理される屈辱」。30代後半を過ぎると、SV(スーパーバイザー)が自分より年下になってくる。20代後半の彼らに「木村さん、後処理が遅いので改善してください」と指導される。彼らに悪気はない。仕事だ。だがこちらの精神はじわじわ削られる。「俺は何をやってきたんだ」って問いが、毎日心の隅で点滅する。

みっつめは「キャリアの袋小路感」だ。コールセンター業務は、どれだけ熟練しても汎用的なスキルとして外で評価されにくい。10年やってきても、職務経歴書に書ける言葉は「電話対応」「クレーム処理」「新人教育」くらいだ。営業や企画みたいな「数字で語れる実績」がない。この閉塞感が、年齢を重ねるごとに重くのしかかってくる。

「辞めたい」と思った時、まず疑うべきこと

ただ、「辞めたい」って感情が出てきた時、すぐに行動に移すべきじゃない。

なぜなら、コールセンター業務の特性上、「辞めたい」という気持ちは、しばしばクレーム対応直後の一時的な情動であることが多いからだ。あれだけ罵倒されれば、誰だって辞めたくなる。それは正常な反応だ。だが翌朝起きて、コーヒーを飲んで、深呼吸をしてから、もう一度同じ気持ちかどうかを確認する必要がある。

俺がやっているのは、「辞めたい度合いを10段階で記録する」という地味な習慣だ。スマホのメモアプリに「日付」「辞めたい度(10段階)」「きっかけ」だけを記録していく。これを3ヶ月続けると、自分のパターンが見えてくる。

俺の場合、月末の繁忙期と、特定のクレーマーから電話が来た直後だけ、辞めたい度が9まで跳ね上がる。それ以外の日は3〜4で安定している。つまり「辞めたい」が衝動なのか、慢性的な不調なのかが、データで判別できるようになる。

衝動なら、対処すべきは「衝動の引き金」のほうだ。慢性なら、本当に辞めることを検討すべきフェーズに入っている。これを混同すると、勢いで辞めて翌月の家賃が払えなくなる、という最悪のシナリオを引き当てる。感情のままに辞表を書く前に、データを取る。それくらい冷めた態度でいい。

辞めた場合の、冷たい現実

仮に辞めた場合、中年の俺たちに何が待っているか。これも直視しておく必要がある。

40代未経験で正社員として採用される確率は、限りなく低い。コールセンター経験者が転職市場で行ける場所は、おおむね3つだ。別のコールセンター。倉庫作業や軽作業。警備員や清掃。年収は確実に下がる。手取り18万を切る可能性が高い。

「もっと楽な仕事があるはずだ」っていう幻想は、捨てたほうがいい。中年・低スキル層に開かれている扉は、コールセンター業務よりも肉体的にきつい現場ばかりだ。座って電話を取る仕事のほうが、立ちっぱなしで荷物を運ぶ仕事よりも、客観的には「楽」なんだ。これは認めにくい現実だが事実だ。

辞めることが間違ってるとは言わない。だが**「辞めれば楽になる」は幻想**だってことは、頭に入れておいたほうがいい。辞めて楽になるんじゃない。辞めた先で別の苦労が始まる。それだけのことだ。

続けるなら、何を捨てて何を守るか

じゃあ、続けると決めた場合、どうすれば消耗を最小化できるのか。俺が10年でたどり着いた地味な技術を書いておく。

まず「クレーム対応を、自分の人格と切り離す」こと。罵倒されているのは「木村浩司」という人間じゃない。「コールセンターのオペレーターという役割」だ。電話を切った瞬間にその役割を脱ぐ。トイレに立って手を洗い、鏡を見て「俺は木村浩司に戻った」と心の中で唱える。馬鹿馬鹿しく聞こえるかもしれないが、これをやるかやらないかで、退勤後の精神状態がまったく違う。役割と人格を混同した瞬間、人は壊れる。

次に「出世を完全に諦める」こと。SVになれば月収は2〜3万上がるが、責任とストレスは5倍になる。中年の俺たちの体は、もうその負荷に耐えられない。出世しないと決めれば、評価面談で何を言われても受け流せる。「はい、すみません、改善します」と言って、何も改善しない。それでいい。期待されない自由のほうが、期待される重圧よりずっと貴重だ。

そして「装備品で消耗を減らす」こと。これは具体的な投資の話だ。派手じゃないが、毎日少しずつ消耗を減らしてくれる装備がある。「いつか辞める」までの体力を温存するための、地味な投資だ。

会社支給の安物ヘッドセットから自前のものに変えるだけで、耳の疲労が激減する。私物の持ち込みが許される職場なら検討する価値あり。
Jabra ヘッドセット Evolve2 30 SE UC Mono

通勤電車でこれをつけて無音にする。外部刺激を遮断する時間を、強制的に作る。 音楽じゃなくて無音が良い。この記事の執筆中も耳栓をしている。
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俺たちにとって、それはどういう意味を持つのか

コールセンター 辞めたい」と検索したあなたに、最後に伝えたいことはひとつだ。

辞めるのは選択肢のひとつだ。だが、それは「最後のカード」として手元に残しておくべきものだ。今すぐ切るカードじゃない。

まずやるべきは、自分の「辞めたい」が衝動なのか慢性なのかを記録すること。次に、辞めた先の現実を直視すること。そして、続けるなら消耗を最小化する技術を身につけること。

辞めない、という選択は敗北じゃない。それは「今ある椅子の価値を、誰よりも正しく理解している」ってことだ。世間はキラキラした転身物語を讃えるが、俺たちが本当にやるべきは、目立たない場所で、静かに、しぶとく、生き残ることだ。

明日の朝もまた、同じヘッドセットを耳に当てて、「お電話ありがとうございます」と言う。それでいい。それが俺たち中年オペレーターの戦い方だ。

まあ、仕方ない。今日も、電話を取りに行くか。

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この記事を書いた人

kouji_kimuraのアバター kouji_kimura 限界独身サバイバー

38歳、独身。手取り22万の電話オペレーター。 27歳で「あなたとの将来が見えない」と振られたことを機に、世間並みの幸せを諦める。現在は、人生のダメージを最小化する「生存防衛線」を構築し、静かな孤独を享受している。

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