前回、俺は「孤独死した賃貸物件の損害賠償は最悪400万円を超える」という話を書いた。 そしてその記事の中でこう書いた。 「相続放棄しても、連帯保証人になっている家族には請求が行く」と。
ここを読んでヒヤッとした奴がいるはずだ。俺もそうだった。 賃貸契約を結ぶとき、保証人欄に誰の名前を書いたか覚えてるだろうか。父親か、母親か、兄か、姉か。あるいは何年も連絡を取ってない親戚か。
その人間に、俺たちが死んだ後、何百万円の請求書が届く。それが現実だ。 今回はその話を書く。
- 孤独死したとき、賃貸の連帯保証人にどんな責任が発生するのか知りたい
- 家族が相続放棄しても、保証人としての請求は本当に来るのか確認したい
- 生前に、保証人を「解放」するための具体的な方法を知りたい
連帯保証人と保証会社、何が違うのか
まず基本の整理から始めよう。 賃貸契約には大きく分けて二つの「保証」のパターンがある。
1. 連帯保証人(個人)を立てる契約
親や兄弟、親戚など、個人が保証人になるパターン。昔ながらの賃貸契約はこれが主流だった。
2. 保証会社を利用する契約
家賃保証会社に保証料を払って契約を結ぶパターン。最近の賃貸契約はこっちが主流になりつつある。
俺が住んでる築28年のアパートを契約したのは、もう8年前だ。当時は保証会社利用ってのが今ほど普及してなかった。だから契約書の保証人欄には姉の名前が書いてある。 これが、後で大きな問題になる。
連帯保証人の「責任の重さ」を、正確に知る
「連帯保証人」って言葉を、多くの人間が誤解してる。 これは「もし本人が払えなかったら代わりに払う人」じゃない。 正確には、「本人と全く同じ責任を負う人」だ。
つまり大家は、俺と姉のどちらにでも、いつでも、いきなり全額を請求できる。 俺が生きてる間はまあ問題ない。家賃は毎月払ってるからだ。 問題は、俺が死んだ瞬間に発生する。
俺の死後、損害賠償200万〜400万円の請求書が大家から発行される。 このとき大家は二つの選択肢を持つ。
A. 相続人(俺の両親や姉)に請求する
B. 連帯保証人(姉)に請求する
両親や姉が相続放棄をすればAの請求は消える。 だが、Bは別だ。保証人としての責任は相続とは完全に別物だから、姉が相続放棄しても保証人としての請求は普通に届く。 姉に逃げ場はない。
これが連帯保証人の本当の重さだ。 8年前、俺が「保証人になってくれ」と頼んだとき、姉は深く考えずにハンコを押した。俺もその責任の重さを正確には理解してなかった。 だが現実には、姉は俺の死後に200万円の借金を背負う可能性のある立場にいる。 これを知ったとき、俺は本気で背筋が冷たくなった。
民法改正(2020年)で、何が変わったか
ここで少し希望のある話もしておく。 2020年4月の民法改正で、連帯保証人の責任には「極度額(限度額)」を契約書に明記しなければならないってルールができた。 これによって、改正後に結ばれた賃貸契約では「保証人が無制限に責任を負う」状況はなくなった。
ただし、これは2020年4月以降の契約に限った話だ。 それ以前に結ばれた契約には適用されない。俺の契約は8年前だから、ガッツリ旧法のルールが残ってる。 更新のタイミングで新しい契約書を巻き直してれば話は別だが、ほとんどの賃貸契約は更新時に保証条項を書き換えない。
要するに、長く同じ部屋に住んでる俺たちはいまだに「無制限責任」の保証人を抱えてる可能性が高いってことだ。 これは確認したほうがいい。今すぐにでも、契約書を引っ張り出して見るべきだ。
保証人を「解放」するための具体的な手順
ここからが本題だ。 姉に200万円を背負わせるなんて、俺には絶対に許せない。 だから生前のうちに保証人を解放する手続きを取る。具体的にはこうだ。
1. 賃貸契約を「保証会社利用」に切り替える
これが最も根本的な解決策だ。 更新のタイミングで大家に相談して「個人の連帯保証人じゃなく、保証会社利用に切り替えたい」と申し出る。 保証料は家賃の30〜100%(初回)+ 年間1万円程度。決して安くはないが、姉を解放できるなら払う価値はある。
大家側にもメリットがある。保証会社のほうが回収力が強いから、嫌がる大家は意外と少ない。
2. 大家との交渉が難しい場合は、引っ越しを検討する
大家が頑なに「連帯保証人じゃないとダメ」と言うケースもある。古い大家ほどそうだ。 その場合は、更新のタイミングで保証会社利用が可能な物件に引っ越すことを検討する。 引っ越し費用は痛い。だが、姉に200万円を背負わせる確率を考えれば、これは「保険料」みたいなもんだ。
3. 孤独死保険に加入する(前回記事の続き)
前回も書いた孤独死保険(少額短期保険)に入っておけば、損害賠償の大部分はカバーされる。 保証人にも、保証会社にも、家族にも請求が行く前に、保険金で支払いが完結する。 月千円で姉を守れるなら、これは最優先で加入すべきだ。
4. 引継ぎメモに「保証人情報」と「契約書の場所」を明記する
俺が作ってる「引継ぎメモ」には、賃貸契約書の保管場所、保証人の情報、保証会社の連絡先を全部書いておく。 これがあれば俺の死後に家族や保証人が「何をすべきか」を最短で判断できる。 引継ぎメモの作り方は書籍『独身男のリアル終活』に書いた。

独身男のリアル終活:手取り20万からの孤独死・老後破産 回避マニュアル 〈防御編〉: 年収300万、結婚も出世も諦めた30代・40代へ。親の介護、デジタル遺品、葬式、借金…誰にも迷惑をかけずに静かに逃げ切るための防衛線の張り方
ちなみに、保証人を頼める家族がいない人はどうするのか
ここで別パターンの話もしておく。 「そもそも保証人を頼める家族がいない」という独身者も多いはずだ。 その場合、選択肢は二つしかない。
1. 保証会社を利用する物件を探す
最近は保証会社利用必須の物件が増えてる。むしろ「身寄りがない人」のほうが、保証会社の審査さえ通ればスムーズに契約できるケースもある。
2. UR賃貸住宅を検討する
URは保証人不要だ。家賃も比較的安定してる。低所得の独身男性にとって、これはかなり現実的な選択肢になる。 ※ここに UR賃貸の公式サイトへのリンク設置可能
身寄りがないことは、賃貸契約において必ずしもマイナスじゃない。保証人を頼める家族がいない代わりに、誰にも迷惑をかけずに死ねる——そういう設計が可能ってことだ。
俺たちにとって、保証人とは何を意味するのか
連帯保証人ってのは、俺たちが生きてる間は「ただの形式」でしかない。 だが俺たちが死んだ瞬間、その人間は最大の被害者になる。 俺の場合、それは姉だ。8年前にハンコを押しただけで、200万円の請求書を背負わされる可能性のある人間。
「俺は家族と疎遠だ」「姉とは数年に一度しか会わない」——そう言って割り切ってきた俺でも、姉に200万円の借金を残して死ぬのは耐えられない。 これは愛とか感謝とか、そういう感情の問題じゃない。ハンコを押してもらった人間に対する、最低限の責任だ。
俺たち独身・低所得の男ができる最後の親孝行は、孫の顔を見せることでも、定期的に電話することでもない。 保証人にした人間を、生前のうちに解放しておくこと。 それが俺たちにできる、唯一かつ最大の親孝行ってやつだ。
まあ、仕方ない。契約書を見直そう。それだけのことだ。
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