30代前半、俺は月5000円の医療保険に入ってた。営業のおばちゃんに

「独身でも入っといたほうがいいですよ、入院した時に困りますから」
と言われて、よく分からないまま契約した。
加入して3年経った頃、ふと冷静になって計算してみた。月5000円×12ヶ月で年6万円。10年で60万円。30年で180万円。これだけ払って、本当に俺は「困らない」のか?
調べた。日本の公的保険制度を、初めて真面目に調べた。
結論を先に書く。俺は加入してた医療保険を解約した。理由はこの記事に書く全てだ。
世の中の「独身でも保険は必要」って主張のほとんどは、保険会社の営業マンの飯のタネだ。一度、自分の頭で冷静に計算してみてほしい。たぶん大半の独身男にとって、民間の保険は不要か、必要だとしても最低限でいい。
- 独身男に民間の保険が必要なのかどうか、判断基準を知りたい
- 営業マンや親に「保険くらい入っておけ」と言われて断り切れずに困っている
- 昔加入した保険を解約していいのか、踏ん切りがつかない
保険の目的は「失った時に経済的に困る人を守ること」
これが保険の本質だ。シンプルな原則だ。
死亡保険なら、自分が死んだ時に経済的に困る家族(妻や子供)を守るための仕組み。医療保険なら、入院や手術で多額の自己負担が発生した時に家計を守るための仕組み。
ここで独身男の状況を考えてみる。
俺が死んでも経済的に困る人間はいない。両親は健在で年金で生きてる。姉は既婚で別世帯。俺の収入を当てにして生きてる人間は、この世に一人もいない。
俺が死んでも誰も困らない。これは寂しい事実だが、保険の文脈では強力な事実だ。なぜなら死亡保険に入る理由がゼロってことだからだ。
「自分の葬式代くらいは」と言う人間もいる。だがそれなら100万円を口座に置いておけば済む話だ。月数千円の保険料を払い続けるより、はるかに合理的だ。
独身男が検討する3つの保険、全部解剖する
独身男に対して保険会社が売り込んでくる保険は、だいたい3種類だ。一つずつ解剖していく。
死亡保険 ― 完全に不要
これは前述の通り。守るべき家族がいない独身男に、死亡保険は構造的に不要だ。
「葬式代のために」と勧められたら、貯金で用意しろと返せばいい。「相続で家族に残せます」と言われたら、残す相手がいないと返せばいい。会話はそれで終わる。
例外は両親が経済的に俺に依存してる場合だけだ。親が無年金で俺の仕送りで生活してる、というケース。これは独身男全体の中でかなりレアなケースだ。
医療保険 ― 大半は不要
ここが議論の中心になる。「入院した時に困るから」って理由で勧められる、あの保険だ。
結論から書く。日本の公的医療保険制度(健康保険・国民健康保険)が異常に強いため、民間の医療保険はほぼ不要だ。
理由は2つの制度にある。
ひとつ目、高額療養費制度。これは医療費の自己負担に上限を設ける制度だ。年収約370万円以下の俺たちの場合、月の自己負担上限は約5万7600円。100万円の手術を受けようが3ヶ月入院しようが、自己負担はこの上限額までしか発生しない。
ふたつ目、傷病手当金(健康保険加入者の場合)。病気やケガで仕事を休んだ場合、給料の約2/3が最長1年6ヶ月支給される。俺の手取り22万なら月14万円前後が休職中も入ってくる計算だ。
この2つの制度を組み合わせると、入院しても破産することはまず起きない。民間の医療保険が補填する範囲は、すでに公的制度がカバーしてるってことだ。
月5000円の医療保険に入って入院日額5000円もらうより、月5000円を貯金に回したほうが合理的だ。10年で60万円貯まる。これがあれば高額療養費制度の自己負担分を10ヶ月分カバーできる。算数の問題だ。
がん保険 ― 微妙だが基本的には不要
がんは特別怖い病気だから、と勧められるのがこれだ。
確かにがんは長期治療になる可能性があり、医療費が積み上がる。だがここでも高額療養費制度が効く。年間で見ると自己負担の上限は決まってる。
問題は治療と並行して仕事ができなくなり、収入が途絶える可能性だ。だがこれも傷病手当金が1年6ヶ月カバーする。
独身で扶養家族がいない俺たちにとって、最悪のシナリオでも「自分一人の生活費が捻出できれば耐えられる」状態だ。家族の生活を背負ってる人間に比べて、必要な保障額は圧倒的に少ない。皮肉な話だが、独身であることが保険料を下げる要因になる。
ただし1年6ヶ月を超える長期治療になった場合は、傷病手当金が切れる。ここをどう考えるかって議論はある。
俺の結論は、そこに備えるなら保険じゃなくて貯金だ。300〜500万円の現金があれば最悪のシナリオでも数年は耐えられる。月数千円の保険料を払い続けるより、その金を貯蓄と新NISAに回したほうが、長期的にはまず勝つ。
日本の公的制度は、想像以上に強い
ここまでの話の根幹にあるのは、「日本の公的保険制度は世界的に見ても異常に手厚い」って事実だ。
俺たち日本人は健康保険料を給料から天引きされすぎてて、その有り難みを忘れがちだ。だが冷静に制度を読むと、これはとんでもなく強い保険制度だ。月3万円前後を払う代わりに、医療費の自己負担上限は月5万7600円、休職中の所得補償もある。
これに追加で月数千円の民間保険を上乗せする必要があるか。冷静に計算すれば、答えはほぼノーだ。保険会社の営業マンが教えてくれない事実は、ここにある。当然だ。教えたら自分の商売が成立しなくなる。
例外的に保険を検討する価値があるケース
とはいえ「絶対に保険はいらない」とまでは言わない。例外はある。
ひとつ。貯金が100万円もない状態。この場合、医療費の一時的な立て替えすら厳しい。最低限の医療保険を、貯金が貯まるまでの期間だけ加入する、というのは合理的だ。貯金が300万円を超えたら解約する。
ふたつ。自営業・フリーランス。国民健康保険には傷病手当金がない。長期で働けなくなった時の所得補償が公的制度にないので、就業不能保険などを検討する余地はある。会社員ならこれは不要だ。
みっつ。親の経済的な扶養者。親が無年金で俺の収入で生活してる場合は、最低限の死亡保険が必要になる。
この3つに該当しない独身男にとって、民間保険はほぼ全て保険会社への寄付だ。
今夜やるべき3ステップ
ひとつ。今加入してる保険の証券を全部出す。引き出しから引っ張り出してこい。月いくら払ってるか、どんな保障内容か、全部紙に書き出す。意外と自分が何に入ってるか把握してない奴が多い。俺もそうだった。
ふたつ。「これは誰のための保険か」を自問する。死亡保険なら受取人は誰か、その人は俺が死んだら経済的に困るのか。医療保険なら、高額療養費制度と傷病手当金で足りない部分を本当に補填してるのか。
みっつ。不要と判断したら、解約する。保険の解約は電話一本で済む。「解約させまいとする説得」が一通り入るが、聞き流せ。解約しても罰金はない(解約返戻金が減るタイプは別だが、独身向けの掛け捨て医療保険なら問題ない)。
『生命保険は「入るほど損」?!』(後田亨)
元保険営業マンが書いた、独立系の保険批評本。冷静な計算の参考になる
俺たちにとって、それはどういう意味を持つのか
保険は「不安を金で買う商品」だ。これが本質だ。
俺たち独身男は、不安を抱えやすい。一人だから誰も助けてくれない、病気になったらどうしよう、死んだ後はどうなる――こういう不安が夜中の三時に襲ってくる。保険会社の営業マンは、その不安をピンポイントで突いてくる。商売としては正しい。だが買う側が正しいかどうかは別の話だ。
不安は感情であり、必要な保障は計算で決まる。この2つを混同してはいけない。
俺が30代前半に医療保険に入ったのは、計算じゃなくて感情だった。「独身で一人だから何かあった時のために」って漠然とした不安。あの不安に俺は3年間で18万円払い続けた。
18万円あれば、ブックオフの110円本が1600冊買える。新NISAで運用すれば30年後には数十万円になってる可能性もある。あれは完全に保険会社への寄付だった。
不安に金を払うな。計算に基づいて金を払え。これが俺たちが学ぶべき基本姿勢だ。
そして計算に基づいて判断すると、日本の独身男にとって民間保険のほとんどは不要、という結論が出る。これは俺の意見じゃない。高額療養費制度と傷病手当金が制度として存在してる、って事実から導かれる結論だ。
夜中の三時に保険のことで動悸が起きたら、布団の中で高額療養費制度のページを開いてみるといい。漠然とした不安は具体的な数字と制度に変換した瞬間、ただの算数になる。
まあ、算数なら俺たちにも解ける。何度でも言うが、これが俺たちの戦い方だ。
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