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親が認知症になった一人っ子独身男に、逃げ場はない ― それでも沈まないための”五つの装備”

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正月、実家に帰ったときの話だ。 母親が同じ話を三回繰り返した。

一回目は流した。二回目で気づいた。三回目で背筋が冷えた。 「ああ、来るな、これは」って。

俺はふたりっ子だ。姉がいてもう結婚もしている。親父はまだしっかりしてるが、母親が先に来るのか親父が先に来るのか、あるいは二人同時に来るのか、それは分からない。だが「来る」ことだけは、ほぼ確定してる

俺の場合は姉と「姉が今週、俺が来週」って分担できる。話し合いもできる。だが一人っ子にはそれがない。全部、一人だ。一人っ子の独身男にとって、親の認知症ってのは介護の中でも別格の難易度だ。

この記事は、いつか来るその日のために一人っ子のためのアドバイスでもある。

この記事で解決できる悩み
  • 一人っ子の独身男性が親の認知症で直面する、特有の困難がわかる
  • 「沈まない」ために事前に揃えておくべき五つの装備が具体的にわかる
  • 親の判断能力が落ちる前に、絶対にやっておくべき手続きの優先順位が手に入る
目次

一人っ子の独身男にとって、親の認知症が”別格の地獄”である理由

世の中の認知症介護の記事はたいてい「家族で支え合いましょう」で締めくくられる。だが一人っ子の俺たちには、その「家族」がいないんだよ。

全ての意思決定が、一人にのしかかる

施設に入れるか、在宅で見るか。延命するか、しないか。財産をどうするか。これらの判断を、相談相手なしで一人で下すってのが一人っ子介護の正体だ。

後で「あの判断は間違ってたんじゃないか」って自分を責めても、慰めてくれる兄弟はいない。全部、自分の中で消化するしかない。これは効く。じわじわと効くんだ。

親戚が「外野」として湧いてくる

兄弟がいないからって、誰も口を出してこないわけじゃない。普段は何もしてくれない叔父や叔母が、こういうときだけ口を出してくるんだ。「もっとちゃんと見てやれ」「施設に入れるなんてかわいそうだ」とか。

金も手も出さないくせに口だけは出す。あの構造に、一人っ子は何度も殴られることになる。覚悟しておいた方がいい。

自分の人生が”親の人生”に完全に飲み込まれる

兄弟がいればローテーションで自分の時間を確保できる。一人っ子にはそれがない。親の認知症が進行すればするほど、俺たちの人生は親の人生に同化していくんだ。

親が死ぬまでの数年から十数年、自分の時間が完全に消える。これが一人っ子介護の最大の代償だ。

沈まないための”五つの装備”

じゃあどうするか。俺なりに整理した、一人っ子独身男が認知症の親に向き合うために事前に揃えておくべき装備を、五つ並べておく。

装備①:成年後見制度の知識

親の判断能力が落ちると、銀行口座が凍結される。親本人ですら自分の口座から金が下ろせなくなるんだ。当然、子が代わりに下ろすこともできない。

これを回避する制度が成年後見制度だ。家庭裁判所に申し立てて、親の財産管理や契約代行を法的に行えるようにする。

ただし、これには罠もある。一度成年後見人がついたら、原則として親が亡くなるまで外せない。後見人に弁護士や司法書士がつくと月2〜6万円の報酬が発生し続ける。「使うべきだが、使い方を間違えると金が出ていき続ける制度」として頭に入れておく必要がある。

装備②:家族信託(民事信託)の知識

成年後見制度の弱点を補うのが家族信託だ。親が元気なうちに、財産の管理権を子に移しておく契約のことだ。

これなら親の判断能力が落ちても、子が親の財産を柔軟に使える。介護費用に充当する、実家を売却する、そういうことが可能になる。後見制度より自由度が高く、ランニングコストもかからない。

ただし親に判断能力があるうちにしか契約できない。認知症が進んでからじゃ手遅れだ。だから今のうちに知っておく必要があるんだ。

このへんの制度は本で勉強しないと、口頭で理解するのは難しい。俺はKindleで成年後見制度と家族信託の本を読み比べた。月980円の自己防衛投資で、数百万円の損失を防げる可能性がある。悪くない計算だろ。

装備③:医療同意の事前準備

認知症が進んだ親が病気で倒れたとき、「延命治療をするか」「手術に同意するか」を子が判断することになる。これを判断能力のある親と事前に話し合っておかないと、判断する側の子が一生苦しむことになるんだ。

気まずいのは分かる。だが「もし倒れたらお前は延命治療を望むのか、望まないのか」を、一度でいいから親と話しておく。できれば紙に書いてもらう。サインしてもらう。これがあるかないかで、後の俺たちの苦しみが全然違ってくる。

装備④:地域包括支援センターとの関係構築

一人っ子の最大の弱点は「身内のサポーターがいない」ことだ。だからこそ、身内じゃない協力者を早めに作っておく必要がある。

地域包括支援センターは無料で介護相談に乗ってくれる行政の窓口だ。親の住民票がある自治体のセンターに、認知症の兆候が見えた時点で一度顔を出しておく。早い段階で名前と顔を覚えてもらうだけで、いざというときの初動が劇的に変わるんだ。

これは一人っ子にとっての”擬似的な兄弟”を作る作業だと思えばいい。

装備⑤:自分の感情の逃がし方

これが一番見落とされる装備だ。

一人っ子の介護者は、感情を吐き出す相手がいない。職場じゃ言えない、友人にも重すぎて話せない、恋人もいない。抱え込んだ感情は、どこかで暴発するんだよ。

俺の答えは「書く」だ。手書きでもPCでも何でもいい。今日あったこと、親に対して感じたこと、自分への苛立ちを、誰にも見せない場所に書き殴る。これだけで感情が「言語化された排泄物」として外に出ていく。

あるいは深夜ラジオを聴くのもいい。オードリーや有吉が吐き出す世の中への愚痴を聴いてるだけで「ああ、自分以外にもくたびれてる人間がいるんだな」って思える。それだけで、一晩しのげる夜もある。

一人っ子介護の本質は”他人を巻き込む技術”だ

一人っ子の介護は孤独な戦いに見える。だが本当に孤独な人間は、その戦いに負ける。

勝つ一人っ子ってのは、上手に他人を巻き込んでる人間なんだ。ケアマネ、地域包括、訪問介護のヘルパー、施設の職員、行政の担当者、市役所の福祉課、医師、看護師。これらの「身内じゃない協力者」をどれだけ自分の周りに配置できるか。それが勝敗を分ける。

兄弟がいないってのは、確かに不利だ。だが裏を返せば「兄弟との確執」や「兄弟への配慮」で消耗しなくていいってことでもある。意思決定は遅延しない。誰かに気を遣う必要もない。

一人っ子の介護は、孤独だが、シンプルなんだ。そう割り切るしかない。

結論:一人っ子の独身男は、最初から”プロの介護者”になるしかない

兄弟がいる人間は最初は素人で許される。失敗しても兄弟がフォローしてくれる。だが一人っ子の俺たちには、その猶予がない。最初からプロとして、親の介護に臨むしかないんだ。

制度を知らないと損する。手続きを知らないと詰む。協力者を作れないと壊れる。だから今のうちに本を読んで、制度を頭に入れて、地域包括の場所を調べておく。

これは親孝行じゃない。これは一人っ子として生まれた以上、避けて通れない人生のミッションだ。

まあ、仕方ない。 一人っ子に生まれた時点で、このカードを引くことは決まってたんだから。

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この記事を書いた人

kouji_kimuraのアバター kouji_kimura 限界独身サバイバー

38歳、独身。手取り22万の電話オペレーター。 27歳で「あなたとの将来が見えない」と振られたことを機に、世間並みの幸せを諦める。現在は、人生のダメージを最小化する「生存防衛線」を構築し、静かな孤独を享受している。

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